開高健氏の本の中に氏が泊まりたかったが実現しなかった
ホテルとしてクレイゲラヒーは登場する。
スペイサイド・エリアにあり、500本以上の
スコッチを常備し、最高のホスピタリティを誇る隠れ家。
酒豪の誉れ高い開高氏であればその思いの丈はわかる。
なかなか予約の出来ないホテルという印象の
クレイゲラヒーに是非泊まってみたいとそれ以来思っていたところ、
今回たまたま運良く1日だけ予約ができた。
行ってみるとHOTELと大きく書かれた瀟洒な建物が建っていた。
アメリカのリゾートのように華美なものは一切なくHOTELと書
かなければなんだかわからないくらいに楚々としていて好ましい。
これがフロントである。この小ささ気さくさには驚いた。
考えてみればホテルの入り口も小さく家に入るような感じはマルロゥの
コンプリート・アングラーでも体験した。
長く逗留するスタイルのホテルはこれで良いと思う。
フロントはチェックイン、チェック・アウトとインフォメーション
をする場所だと考えるとアメリカ型の大型ホテルのように
客を威圧するような巨大さと緊張感は必要ないのである。
必要な時に用が足せてそれ以外は気にならない存在で居てくれた
方がよい。クレイゲラヒーの顧客を思う合理性に感心した。
宿泊で最重要な部屋である。それほど広くはないが綺麗に掃除
され、家にいるような落ち着きがあった。
洗面所とバスルームの眺めは窓越しに見える風景が美しく
ぼーとしながら歯磨きをするには最高
居間である。
バーカウンターの内部から見たものだが、バーには壁一面にスコッチが
並んでいた。そればかりかHOTELのあちらこちらにスコッチが並んで
いる。
こんなコーナーがホテルのあちらこちらにあり。何の気なしに座ると
今まで存在を感じなかったボーイが注文をとりに来てくれる。
どこにから見ているのだろうと考えたがわからなかった。
良い感じの突き放しと良い感じの対応はさすが高いホスピタイティと
大いに感心した。
ディナーの一例、ラムの骨付き焼きである。しっかりとした量と
大変美味しい肉とソースだった。
朝食のキッパーである。朝食とは思えないボリュームに圧倒されたが
大変美味しくすべてたいらげてしまった。
どれもこじゃれたフレンンチでもイタリアンでもなく地元料理で
ある。毎日食べても、いくら食べても飽きない普段食である。
このホテルの料理は人気がありレストランも予約が入りにくい
ようである。
スコッチの銘酒の数々。料理と一緒にどうぞ。
忘れてはいけないのがこのホテルの鍵。なんとブラス製の
アトランティック・サーモンで重さが250gもある。ホテル中を歩き回り
そこここでスコッチを飲めば鍵を忘れたり落としたりすることもある。
このかぎの存在感ならば鍵だけは忘れないだろう。
旅は音楽と一緒で良い時間を楽しむものだと僕は思っている。
まさに今回は良い時間をいただいた。
予約の取れないホテル・クレイゲラヒーは長く泊まりたくなる
ホテルであり。顧客にとって理想的な距離とサービスを提供
してくれる数少ないホテルだった。合理性は顧客に対して考えるもので、
スタッフの利便性ではないことを実感した。開高健大兄だったら
なんと言って褒めただろう。その文章を見たくなった。
こんなホテルの演出のよう音楽を作ってみたいと思った。
でも今の日本では沢山は売れないだろうな・・。